ニュースや防災訓練のお知らせで「南海トラフ地震」という言葉を見かけたことがある人は多いと思います。学校の避難訓練や自治体の広報でもよく取り上げられています。
ただ、「南海トラフ地震」と「東海地震」や「首都直下地震」はどう違うのか、そもそもどこで起きる地震なのかは、意外とはっきり説明できない人も多いのではないでしょうか。
南海トラフ地震とは、ひとことで言えば、太平洋側の海底にある「南海トラフ」と呼ばれる場所を震源域として発生が想定されている、規模の大きな地震のことです。
この記事では、南海トラフ地震が起こるしくみや過去の記録、想定される被害、東海地震・首都直下地震との違いについてわかりやすく解説します。
南海トラフ地震とは
南海トラフ地震とは、静岡県の駿河湾付近から九州の日向灘にかけて延びる「南海トラフ」と呼ばれる海底の地形を震源域として発生する、規模の大きな地震のことです。
「トラフ」とは、海溝よりも傾斜がゆるやかな海底のくぼ地を指す地形の用語です。南海トラフは、プレートどうしが接する境界にできています。
過去の発生例から、次に起きた場合もマグニチュード8から9クラスの巨大地震になると想定されています。広い範囲で強い揺れと大きな津波をもたらすとされる点が特徴です。
一つの地震を指す固有名ではなく、南海トラフ沿いで将来起こりうる地震全般を指す呼び方として使われている言葉です。
南海トラフ地震が起こるしくみ
日本列島の周辺には、複数のプレートと呼ばれる岩盤が存在しています。南海トラフでは、フィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に沈み込んでいます。
この沈み込みの際、プレートどうしが完全には滑らずにくっついた状態になり、地面にひずみ(力のゆがみ)がじわじわとたまっていきます。
このひずみが限界に達すると、接していた部分が一気にずれて元の形に戻ろうとします。この急激な動きが、大きな揺れとなって地上に伝わるのです。
津波が大きくなりやすい理由
プレートの境界は海底にあるため、ずれが起きると海底の形が大きく変化し、その上にある海水も大きく持ち上げられます。これが津波の発生につながります。
南海トラフは震源域が広く、海岸に近い場所でひずみが解放されることもあるため、津波が短時間で沿岸に到達しやすい点が特徴です。
南海トラフ地震の歴史と繰り返しの周期
南海トラフ沿いの地震は、一度きりで終わるものではなく、同じ場所で繰り返し発生してきた記録が残っています。
江戸時代に起きた宝永地震や、昭和の時代に起きた昭和東南海地震・昭和南海地震などが、過去の南海トラフ地震の例として知られています。
これらの記録をもとに、南海トラフ地震はおおむね100年から150年程度の間隔で発生してきたと考えられています。
前回の大規模な発生から一定の年数が経過していることから、将来また発生する可能性があるとされ、国や自治体による備えが進められています。
なお、具体的にいつ発生するかを正確に予測する方法は確立されていません。発生の可能性が高まっているとされる期間であっても、特定の日時を言い当てることはできない点に注意が必要です。
想定される被害の特徴
南海トラフ地震が発生した場合、強い揺れと津波の両方による被害が、東海・近畿・四国・九州の太平洋側にかけて広域で想定されています。
- 静岡・愛知・三重・和歌山・高知などの沿岸部に達する大規模な津波
- 広い地域にわたる強い揺れによる建物の倒壊や火災
- 電気・水道・通信などライフラインの長期的な停止
- 港湾や道路、鉄道などの損傷による物流や移動への影響
とくに津波については、場所によっては沿岸部に非常に高い波が到達すると想定されており、地震発生後すぐに避難することが重要とされています。
被害の範囲が一つの都道府県にとどまらず、複数の都道府県にまたがる広域災害になりうる点が、南海トラフ地震の大きな特徴です。
南海トラフ地震臨時情報とは
南海トラフ地震臨時情報とは、南海トラフ沿いで通常とは異なる現象が観測された際に、気象庁から発表される情報のことです。
たとえば、南海トラフ沿いの一部で大きな地震が起きた場合、残りの区域でも続いて大きな地震が発生する可能性が通常より高まっているとして、注意を呼びかける仕組みになっています。
この情報を受けて、自治体や住民は事前の避難や備蓄の確認など、普段より一段高い警戒を行うことが求められます。
ただし、この情報が出たからといって、地震が必ず発生するというものではありません。あくまで可能性が高まっていることを知らせる仕組みである点を理解しておくことが大切です。
南海トラフ地震と東海地震の違い
東海地震とは、南海トラフのうち、駿河湾周辺を震源域とする地震を指す言葉として使われてきました。
かつては、東海地震・東南海地震・南海地震をそれぞれ別の震源域の地震として分けて考える見方が中心でした。
現在では、これらの震源域が連動して同時に、あるいは短い間隔で続けて動く可能性があるという考え方が重視されており、まとめて「南海トラフ地震」と呼ぶことが一般的になっています。
| 項目 | 東海地震 | 南海トラフ地震 |
|---|---|---|
| 指す範囲 | 駿河湾周辺の震源域 | 駿河湾から日向灘にかけての広い震源域 |
| 考え方の位置づけ | 南海トラフ地震の一部にあたる震源域の呼び方 | 駿河湾から日向灘までを一つの震源域として扱う呼び方 |
| 現在の扱い | 単独での呼び方としては使われにくくなっている | 広域の地震を指す呼び方として広く使われている |
つまり東海地震は、南海トラフ地震という大きな枠の中に含まれる、一部の震源域を指す言葉だと理解すると整理しやすくなります。
南海トラフ地震と首都直下地震の違い
首都直下地震とは、東京都やその周辺の直下で発生する地震を指す言葉で、震源域や発生のしくみが南海トラフ地震とは異なります。
南海トラフ地震は、海底のプレート境界で起こる地震であり、強い揺れに加えて広域での津波被害が想定されています。
一方、首都直下地震は内陸や都市の直下に近い場所で起こる地震が想定の中心で、密集した建物や人口の多さによる被害の広がりが特に懸念されています。
震源域の場所や広さ、津波の有無など、被害の性質が異なるため、両者はそれぞれ別の災害として備えが検討されています。
南海トラフ地震に備える方法
南海トラフ地震への備えは、個人・家庭でできることと、自治体や地域で取り組むことの両方があります。
- 津波が想定される地域では、高台や避難場所への経路を事前に確認しておく
- 数日分の水・食料・簡易トイレなどを備蓄しておく
- 家具の固定や家の耐震性の確認など、揺れへの対策をしておく
- 自治体が発表する津波避難タワーの位置や避難計画を把握しておく
沿岸の自治体では、津波避難タワーの整備や住民向けの避難訓練を定期的に実施している地域もあります。地震発生後、できるだけ早く高台へ移動することが、命を守るための基本とされています。
備えの具体的な内容は地域によって異なるため、自分が住んでいる自治体が公開しているハザードマップや防災計画を確認しておくことが勧められます。
南海トラフ地震に関するよくある誤解
南海トラフ地震については、いくつかの誤解が広まりやすい傾向があります。代表的なものを確認しておきましょう。
発生の時期が特定されているという誤解
南海トラフ地震は、発生する可能性が高い地震として扱われていますが、正確な発生日時を予測する方法は確立されていません。
自分の地域には関係ないという誤解
想定される被害の範囲は非常に広く、沿岸部だけでなく、内陸の地域でも強い揺れや交通・物流への影響を受ける可能性があります。
一つの地震として一度に発生するという誤解
震源域の一部だけで先に大きな地震が起こり、残りの区域が時間差で動く可能性もあるとされています。そのため、一度の揺れが収まった後も警戒を続ける必要があります。
まとめ
南海トラフ地震とは、駿河湾から日向灘にかけての海底にある南海トラフ沿いで発生が想定されている、規模の大きな地震のことです。
プレートの沈み込みによってひずみがたまり、それが一気に解放されることで強い揺れと大きな津波が発生するしくみになっています。
過去の記録から繰り返し発生してきたことが知られており、東海地震はその一部の震源域を指す言葉、首都直下地震は震源域やしくみが異なる別の災害として整理されています。
発生時期を正確に予測する方法はありませんが、避難場所の確認や備蓄など、日常からできる備えを進めておくことが大切です。
